元興寺の入り口は「東門」が表門にあたります。1411年(応永18年)に東大寺西南院の門を移築。国の重要文化財に指定されています。
東門をくぐると正面に建てられているのが、国宝に指定されている「本堂」(通称「極楽堂」)です。本堂の背後には、馬道を挟んで「禅室」と呼ばれる僧坊が続いており、本堂と禅室で分けられていますが、もともとは12室あるひと続きの僧坊として建っていました。
本堂は僧房を内陣とし、それに外陣を加えて建てられており、屋根は妻入りの寄棟造。通常、中央に柱が入る行(けたゆき)は奇数間にするのが一般的ですが、こちらの本堂は桁行6間、梁間(はりま)6間と言う珍しい形式の仏堂です。
建築様式は日本古来建築様式「和様」を基本としながらも、木鼻(きばな)や桟唐戸など、宋から伝わった建築様式「大仏様」の特徴も随所に見られます。内陣の天井は、宋から伝わった建築様式「禅宗様」の1枚の板で張られた鏡天井を採用するなど、鎌倉時代に伝わった新技法を積極的に採り入れた「新和様」の代表的建造物です。
禅室は本堂と同様、和様を基調としながら大仏様の特徴も随所に見られます。また本堂と禅室の屋根の一部には、飛鳥時代の古瓦が使われており、上部が細くすぼまり、下部が幅広い独特の瓦が特徴。この瓦を重ねる葺き方を行基葺(ぎょうきぶき)と呼びます。
収蔵庫に安置されている「五重小塔」は、実物大の10分の1の模型ですが、建造物として国宝に指定されています。奈良時代の五重小塔の遺構を完全に伝える唯一の建造物として、極めて貴重な文化財です。