
埼玉県秩父市大滝に位置する九十九神社(つくもじんじゃ)は、自然豊かな山あいにひっそりと佇む小さな神社です。この神社は、秩父地域でも知る人ぞ知る存在で、観光地としての賑わいとは一線を画し、地元の人々に深く愛されてきた歴史を持っています。 「九十九(つくも)」という名前には、「たくさん」「無数」という意味が込められており、自然の恵みやあらゆる命を敬う心が表れているとも言われています。昔から、山や川、木々といった自然物には神様が宿ると信じられてきました。九十九神社は、そうした自然信仰の流れを色濃く残している場所でもあります。 創建の時期についてははっきりとした記録は残されていませんが、地元の伝承によれば、古くからこの地に暮らす人々が、山の神や水の神を祀るために建てたのが始まりだと伝えられています。秩父の山々は、古来より山岳信仰の対象でもあり、多くの修験者たちが修行の場として訪れていたことから、九十九神社もその流れの中で重要な役割を果たしてきたのではないかと考えられています。 社殿は素朴で小規模ですが、静かな空気と清らかな雰囲気に包まれており、訪れる人に癒しを与えてくれます。神社の周囲には、季節ごとに表情を変える豊かな自然が広がり、春には新緑、夏には濃い緑、秋には鮮やかな紅葉、冬には雪景色と、どの季節に訪れても美しい風景を楽しむことができます。 また、九十九神社には「万物に宿る精霊を敬う」という教えが根付いており、訪れる人々は自然への感謝の気持ちを新たにすることができるでしょう。特に地元では、豊作祈願や無病息災を願うために、年に数回、小さな祭事が行われています。観光客向けの大きなイベントはあまりありませんが、その分、素朴で温かい雰囲気の中で、地元の人々の暮らしと信仰に触れることができます。 アクセスは、秩父市街地から車で1時間ほど。途中の道は、山道が続くため、運転には少し注意が必要ですが、道中の景色もまた格別です。公共交通機関を使う場合は、西武秩父駅からバスを利用し、大滝地域で下車してから徒歩で向かうルートになります。 九十九神社は、派手さはありませんが、心がほっと落ち着くような、そんな場所です。都会の喧騒から離れて、静かに自然と向き合いたい人、素朴な信仰に触れてみたい人に、ぜひ訪れてほしい神社です。