
埼玉県飯能市にある富士浅間神社(ふじせんげんじんじゃ)は、静かな山あいにひっそりと佇む、まるで隠れ家のような神社です。私が初めて訪れたのは、春先のよく晴れた日でした。飯能市の自然を感じたくて軽いハイキングをしていたときに偶然立ち寄ったのが、この神社との出会いでしたが、思っていた以上に心に残る場所になりました。 神社は飯能市の南部、加治丘陵の一角に位置していて、木々に囲まれた小高い丘の上に建っています。名前に「富士」とあるように、富士山信仰に由来する神社で、ご祭神は木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)。美しさや火難除け、安産、家内安全などのご利益があるとされています。神社そのものはそれほど大きくはありませんが、どこか神聖で清らかな空気が漂っていて、訪れる人の心をスッと静かに整えてくれるような、そんな場所です。 入口には鳥居があり、そこからはやや急な石段が続いています。足元に気をつけながら一歩一歩登っていくと、木々の間から神社の拝殿が見えてきて、なんとも言えない達成感があります。上まで登ると、そこには木造の落ち着いた社殿があり、思わず手を合わせたくなるような、静けさと品のあるたたずまいです。私が行った日は平日だったこともあって、ほかに人はおらず、鳥のさえずりと風の音だけが響いていました。 境内からは飯能の町並みや周辺の自然を一望できるスポットもあり、ちょっとした展望台のような気分も味わえます。天気が良ければ遠くまで見渡せて、空の広さを改めて感じました。特に夕方近くになると、空がオレンジ色に染まって、木々のシルエットが浮かび上がる風景がとても幻想的で、しばらくその場に立ち尽くしてしまいました。 また、この富士浅間神社は地元では「浅間様(せんげんさま)」と親しまれていて、地域の人々が大切に守ってきた場所です。お祭りや行事も行われていて、6月末から7月にかけての「お山開き」では、多くの参拝者が訪れて賑わうそうです。富士山への信仰が盛んだった時代、この神社は「富士講」と呼ばれる信者たちの信仰の拠点でもあったそうで、富士山に登る代わりにこの神社に登拝する風習があったんですね。 富士浅間神社は、とても心地よく、また訪れたいと思わせてくれる場所です。飯能方面へ足を運ぶことがあれば、ちょっと立ち寄ってみてください。