
殺生石稲荷神社は、福島県磐梯町にある神社で、その名前にちょっと驚く人も多いかもしれません。「殺生石」といえば、古くから伝わる伝説や神話に登場する名前であり、少し不気味な印象を抱く方もいらっしゃるでしょう。しかし、この神社には意外にも、心が穏やかになるような静かな魅力があります。 私が訪れたのは秋の終わりのこと。福島県の磐梯山近くの山道を進んでいくと、鳥居が見えてきました。周囲には木々が生い茂り、少し肌寒い風が吹いていますが、それがまた神社の神聖な雰囲気を引き立てていました。 殺生石稲荷神社の歴史は、まさに「伝説」から始まります。この神社の名前にもなっている「殺生石」は、平安時代に起こったある伝説に基づいています。伝説によれば、磐梯山の山頂にあったこの石は、かつて狐の妖怪(九尾の狐)が変身したものだと言われています。妖狐は多くの人々に害を及ぼしていたため、神の力を持つ英雄に討たれ、その死骸が岩として変わったというのです。その後、この石は悪霊や害をなす者を浄化する力を持つとされ、地域の人々にとって重要な象徴となりました。 神社の名前はその「殺生石」に由来し、稲荷神社として、商売繁盛や家内安全を守る神様として広く信仰されています。この伝説が地元の人々に受け継がれ、今でも多くの参拝者が訪れる理由となっています。 境内には、 稲荷大神を祀った本殿があり、稲荷神社ならではの狐の像が境内のあちこちに配置されています。これらの狐は、商売や仕事の守護神として大切にされており、石像がしっかりとした存在感を放っていました。狐の像は神の使いとされ、神社では豊作や繁栄を祈るために参拝に来る人々が絶えません。 また、神社周辺の景色もまた特筆すべき点です。磐梯山のふもとに位置しているため、山々の雄大な景色を一望できる場所にあります。特に秋の紅葉シーズンには、境内の木々が色づき、幻想的な雰囲気が漂います。静かに自然と調和したこの場所に立つと、普段の忙しい生活から一歩離れ、心がリフレッシュされるような感覚を覚えました。 境内の隅には、小さな池や祠もあり、訪れるたびに新しい発見があります。狐の像や神々しい雰囲気を楽しみながらも、どこか懐かしさを感じさせる空間が広がっているのが、この神社の魅力だと思います。